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【特別企画】”DEEP INSIDE Vol.6″ NW-ZX300設計担当者が語る、ウォークマンたちの物語。

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秋のヘッドフォン祭2017で輝いていた3製品に贈られる、フジヤエービックが選ぶ

「ヘッドフォン祭アワード2017秋・グランプリ」

3モデル目は既に発売済みで、ヘッドフォン祭会場でもたくさんのユーザーが持ち歩いていたにもかかわらずソニーブースでも試聴する人が多く、買った人にも買ってない人にも人気の高かった、このDAP!

Sony NW-ZX300NW-ZX300もちろんDAP部門ではトップスコアとなったモデル。アワードグランプリ受賞のお知らせとZX300やウォークマン全般についてのお話を伺うべく、大崎駅前のソニービデオ&サウンドプロダクツ株式会社に行ってきました!
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今回、お話を伺うために用意して頂いたのは、通称

「ウォークマン・ルーム」

と呼ばれる場所で、とのこと。一般の方は立ち入れない、そのルームの中へ通して頂くと・・・

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うぉおおお!1979年発売のウォークマン初号機 “TPS-L2″から年代順に、ほとんどすべての歴代ウォークマンが壁の四方にずらりと並べられており、ウォークマン軍団に囲まれてお話を伺います。右上のポスターは、立ち上げ当初アメリカなどで”SOUNDABOUT”という愛称が使われていた時の貴重なものです。

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もちろんカセットだけでなく、CD/MD/DAT/ネットワークウォークマンまで、”WALKMAN”を名乗った数々のモデルが陳列されています。一体この部屋には何台のウォークマンがあるんでしょうかね!?

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昭和生まれがウォークマンといえば、この「猿」のTVCM。どこまで行ったら、未来だろう。」のキャッチコピーも素晴らしいです。

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えっ、これは・・・TPS-L2ゴールドモデル??NW-WM1Zのご先祖さま、ですかね。

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この特別なディスプレイに入っているのは、恐らくエポックメイキングなモデル。TPS-L2,WM-R2,WM-DD,WM-D6,WM-20,D-50,TCD-D3,WM-EX1,D-515,WM-EX88,MZ-1,MZ-R2,WM-EX20,D-E01,NW-E3・・・オーディオファンならどれか一つはお世話になってるはず??

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興奮冷めやらぬ中、ソニービデオ&サウンドプロダクツ株式会社でNW-ZX300のプロジェクトリーダーを担当している 佐藤朝明氏が登場。ヘッドフォン祭のソニーブースにもいらしたので、見覚えのある方いらっしゃるかも。他にソニーマーケティング株式会社の方3名が同席して頂き、始まりました。手塩にかけてきた歴代のウォークマンたちを前にした佐藤氏。。

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以下、フ=フジヤエービック、ソ=ソニー

フ: まずは佐藤さんのご経歴等、お聞かせください。

ソ: 私(佐藤氏)は、以前カーオーディオやカーナビの設計を担当していたのですがウォークマンに代表されるモバイル商品関係の設計を担当することになりました。当初担当したのがNW-Z1000シリーズ(2011年12月発売)で、それからハイレゾ対応したNW-ZX1(2013年12月発売)やNW-F880シリーズ(2013年10月発売)から現在に至るまで、ずっとウォークマンの設計を担当しています。

フ: ちょうど御社がヘッドフォン祭に出展して頂けるようになった時期とぴたり重なるのですね!文字通り「ウォークマンの中の人」として、ハイレゾ対応ウォークマンとそれ以前では何か違いのようなものはあったのでしょうか?

ソ: ウォークマンは「いつでもどこでも音楽を楽しく聴ける」というライフスタイルを実現する為、音質追及をしつつも、小さく・軽く・ロングバッテリーライフな商品を設計するという方針を取っていましたが、私がウォークマンの設計を担当した頃から世の中ではポータブルオーディオでハイレゾを楽しんでいる方が現れていました。そこに、ちょうどソニーとしてハイレゾ商品群を立ち上げるという波が来たので「ウォークマンもハイエンドなオーディオ機器としてもっと音質を重視する」方向へ企画・開発を変化させ、2013年に発売するに至りました。

フ: これまで、青山開催時代からヘッドフォン祭に出展して頂いていますが、ヘッドフォン祭で来場されるお客様からのダイレクトな反応は、いかがでしょう?

ソ: 、商品をご購入頂きユーザー登録して頂いているお客様などから商品についてのアンケートを頂くのですが、実際にお客様に面と向かって会話させ頂くと、簡潔に記入して頂くアンケートの文面だけではなかなか伝わってこない、出てくる音についてとか感性部分での突っ込んだご意見を直に頂けるのが嬉しいですね。「アンケート用紙のスペースじゃ書ききれない!」という熱心なお客様もいらっしゃいます、こういったお客様からの真摯なご要望を受けてフィードバックに努めています。

フ:ありがとうございます、そう言って頂けると当方も大変嬉しいです!これはヘッドフォン祭ならでは、と思うようなお客様からのご意見ってあったのでしょうか?

ソ:当社はヘッドホン・イヤホンも製造していますので基本的には自社製品の組み合わせで音を作っていきますが、ヘッドフォン祭では他社さんの高感度なイヤホンをお持ち頂いて試聴されるお客様が大変多く、旧世代のウォークマン用S-Master HXでは「残留ノイズ」に関する点をご指摘頂き、次世代のS-Master HX開発では音質向上だけでなくその対策も必須だ、となりました。

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フ:2016年の秋のヘッドフォン祭で大きな反響を呼んだ、「Signature Series WM1シリーズ」の開発は、どのように始まったのでしょう。また苦労した点などありましたら、差支えない範囲で教えて頂けますか。

ソ: ZX1,ZX2と2世代のZXシリーズを発売してきて、ユーザーのみなさんから褒めて頂くことも多かったのですが、「ここが足りない」、「この機能が欲しい」、など、本当にたくさんのご意見をもらいました。当時のS-Master HXでは実現できない事が幾つもあったので、次世代のS-Master HXの開発が決まった事で、Signature Seriesの開発」が始まりました。音質の向上はもちろんですが、先程の残留ノイズの件、それからDSDネイティブ再生、ヘッドホン出力アップ、バランス出力・・・と新機軸を全部盛り込んで全て高音質優先で開発を進め、WM1シリーズが完成しました。

フ: バランス出力についてですが、先行して2.5mm4極タイプ端子が広まってきていたなか、4.4mm5極端子を採用されたいきさつなどは?

ソ: 既に当社製品ではポータブルヘッドホンアンプのPHA-3などで3.5mm3極x2タイプのバランス端子を提案していたのですが、WM1シリーズも当初それで検討していたら、ちょうど合ったタイミングでJEITAでの規格化の話が来まして、結果的には4.4mmタイプを採用しました。

フ: 4.4mm5極バランスもソニーさんの純正ケーブルのほか、海外・国内のいくつかの会社さんからも多くの4.4mm5極プラグ・ジャックを採用した製品が続々と出てきており、規格として定着した感があります。

ソ: 発売当初は「独自規格、ローカル規格化しちゃうんじゃないの?」との声もありましたが、徐々に認められてきました。当初はプラグ/ジャックの供給が乏しかったのですが、最近そのあたりの状況も良くなってきました。MUC-12NB1はソニーのMMCXタイプイヤホンと4.4mmバランスジャック装備機器とをつなぐケーブル

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フ: WM1シリーズはデカくて重くて胸ポケットにはとても入らないんですが(笑)、音はさすがです。ソニーさんとして、音をとことん追求したフラッグシップモデルなんですね。

ソ: そうですね、バランス対応、DSDネイティブ再生、そしてS-Masterの改良、特に出力アップ。ヘッドホン端子の出力は、ZX2の15mW/chからWM1シリーズでは250mW/chと大幅に強化されています。NW-WM1Z

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フ:それでは本題のZX300のお話を伺います。ZX300の開発コンセプトというようなものはありますか?

ソ: おかげさまでWM1シリーズは好評を得ることが出来ましたが、確かに音は良いのですが、いかんせん大きいですよね。当然お客様からは小型化の要望を多く頂き、「ポケットの中の最高音質」というテーマを掲げてWM1シリーズに匹敵するような音質をキープしてのチャレンジを始めましたが・・・音質設計のメンバーは良い音に妥協したくないあまり、サイズ目標としていたZX100の筐体レベルに収まりそうにないパーツを使おうとしたり、それでは小型化が進まないと…(苦笑)。でも、そんなときには音質、電気、メカの設計メンバー間でどうしたら音に良いパーツを使えるのかを喧嘩になるんじゃないか?と少し心配になる位に熱く話しあい、それぞれが妥協しない最高のアイデアを引き出してくるんですよね。

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フ: (上の写真の)こちらはZX300の筐体ですね。

ソ: WM1シリーズやZXシリーズでは「シャーシをグラウンドとして使う」というポリシーで設計しており、 基板の金めっきされているポイント(留めねじ穴の周囲がメッキされている部分)が、シャーシと当たるように構造設計されています。基板だけでなくシャーシを含めた低インピーダンスな大きなグラウンドがある事により、電気的に強固で安定したグラウンドになるので音質向上にすごく効果があります。そういう設計ポリシーなので、アルミニウム筐体のWM1Aより無酸素銅筐体のWM1Zの方が音が良くなるんですよ。でもさすがにZX300に無酸素銅筐体は、重いし超高額になってしまうので使えないですけどね・・・。

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フ: ほぉ~。ところでこの基板とかの画像は公開してもよろしいのですか?

ソ: 全然大丈夫ですよ。※みなさんに見てもらえるように、こんな感じで全部きれいにアタッシュケースに入ってます!

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フ: 内部回路などの技術的な向上としては、どんなものがありますでしょうか?

ソ: ZX300ではWM1シリーズと比較して大型の音質部品が使えないので、S-Master HXのICのはんだボールそのものに高音質はんだを使いました。WM1シリーズでも基板全体には高音質はんだを使っているのですが、S-Master HXICそのものにもこの高音質はんだを採用したら、ぐっと音が良くなりました。WM1シリーズで使っていたような大型の音質部品をZX300では少し小さいものにしないとサイズ目標に入れる事ができなかったので、低域の迫力や、高域のクリア感が減ってしまうんです。それをこの高音質はんだボールが補ってくれました。

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フ: えっ、このチップの・・・ですか?(大きさは3mm角程度)

ソ: はい、この黒いチップに小さいツブツブがついていますよね。これがICと基板を接続するはんだボールなのですが、これを高音質はんだに変えました。良くなる可能性があるなら、そこまで音質を追求しようということで、やってみたら音質変わりました。

フ: 確かに私どものスタッフが聴いたときも、また多くのお客様のご感想としても「WM1シリーズに近い音が出ている」という印象で、実際強豪ひしめくZX300の市場価格帯の中でも一番の人気を保っている製品ですね。

ソ: ありがとうございます。

フ: 私どもでは下取交換も行っているのですが、ZX300の場合はZX100からの乗り換えのお客様が割合としては一番多いですね。ZX100から2年、これを待っていたお客様が多いと感じています。

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ソ: そもそもS-Masterはフルデジタルアンプなので、ヘッドホン出力の直前までオーディオ信号をデジタル伝送しているので、完全といってよいほどL/Rのセパレーション特性が取れるようになり、バランス接続でお聴き頂くと驚くほどクロストークの無い、定位がしっかり決まる音になります。

アナログアンプではDual-DACにする事でステレオセパレーションの向上をしていますが、ポータブルオーディオという限られたサイズの中でセパレーション性能を追求する場合には、ディジタルアンプにアドバンテージがあると思っています。

フ: 実は同時に発表されたA40シリーズも人気で、私も前作A30シリーズから予算はあまりかけられないけどいい音が聴きたい、というお客様にレコメンドしてきた「推し」モデルなのですが、A40シリーズはさらに良くなったと思います。

ソ: ありがとうございます。実はZXシリーズ開発チームとAシリーズ開発チームで、チームメンバーが完全に分かれている訳ではなく、上位モデルで好結果をもたらしたことをAシリーズにもフィードバックしているんですよ。

フ: なるほど!次のシリーズも期待できますね、気が早すぎますけど(笑)A40シリーズも今回のヘッドフォン祭アワードの部門賞に選ばれていますよ。

 

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というわけで、ヘッドフォン祭アワードのトロフィーをお渡ししてインタビュー終了。ウォークマン開発チームのもう一人のキーパーソン、「W佐藤さん」の佐藤 浩朗氏も駆けつけて頂きました。ウォークマンなどのコアな話をしたいなら、ヘッドフォン祭などでこのお二人を見つけたらロックオンすべし!?特にこの2,3年のソニーのパーソナルオーディオ部門の充実ぶりは、カセットウォークマンが世界を席巻していた時代を知る昭和世代にとっては嬉しいことです。来年もオーディオ界を賑わせる素晴らしい製品を、期待しています!
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ヘッドフォン祭アワード2017年秋は、こちらのページで公開中です!各部門賞にはどんなモデルが選ばれているか、ぜひご確認ください!

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