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ソニーの新型ハイエンドウォークマンを、今さらプロの耳でじっくりと聴いてみた。

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あけましておめでとうございます、こちらの裏(?)ブログも、アピールをあまりしていないにもかかわらず順調にアクセスを頂いています。2017年も、よろしくお願い致します。

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さて、新春にふさわしい新型機のレビューなど!と行きたいところですが、今回取り上げますのは、

昨年の10/29に発売され、10/22に開催された「秋のヘッドフォン祭2016」でも出品されてソニーブースに試聴の長い列ができるほど注目を集めた、35年以上の歴史を持つ「ウォークマン」史上最高のモデル、「Signatureシリーズ」の2機種

SONY NW-WM1Z / NW-WM1A

SONY_NW-WM1Z_NW-WM1A

もう既に様々なレビュー等が出ていて、実はフジヤエービックのスタッフも発売前のかなり早い時期から試聴させて頂いていましたが、オーディオ機器全般に言えることとして発売に向けてエンジニアさんが最終的な「音のチューニング」をしたり、量産ロットに入ると様々な理由で音が変わっていったり、という事がままあります。実際、最初期に聞いた音の感触と、発売後まもなくして中古で入荷してきた音は違いがありました。

発売後2か月が経過し生産体制も落ち着いて来た今、改めて今後のご購入を検討されている方に「今のSignatureシリーズWalkman」のレビューをお届けしたいと思います。

カセットテープの時代から35年以上続いてきたワールドワイドブランドである”ウォークマン”ですが、その歴史の中でも大事件と言える、市場価格で10万円をはるかに超える”超高価格機”。NW(ネットワーク・ウォークマン)シリーズとなってすでに約10年となりますが、この2機種についてはあえて栄光の型番であるWM(ウォークマン)という機種名を付けていることからも、ソニーの力の入れようが分かるというもの。
しかも基本構造は同じで筐体素材や内部パーツなど差別化した、通常なら「リミテッド」とでもなりそうなハイグレードモデルまで用意し、同時にレギュラー品として発売する、というサプライズが。

さて、それでは実機を見て、聴いてみましょう。まずはソニーの考えるスタンダードと見なせる

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ポータブルプレーヤーとしてはかなり大型で、厚みもかなりある感じのフォルムで本体重量も267gと結構な重さがあるのですが、これが実際に手にもってみると驚くほどしっくりと手に収まります。人間工学的に相当練りこまれたデザインなのでしょう、また各部がラウンドしており、物理スイッチなども筐体からほとんど出っ張っておらず指にひっかかりません(それが握りやすい理由の一つにもなっています)が、各ボタンを少し大きめにデザインしているため配置さえ覚えればブラインドタッチしても誤動作はほとんどありません。

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音を聴いてみましょう!こちらは一聴してわかる”おなじみのソニーサウンド”。これまでのハイレゾプレイヤーのトップモデルだったNW-ZX1/ZX2の系譜にある、クッキリハッキリした輪郭のある音にメリハリの効いたハイとロー。WAV/FLACなどのPCM系音源はもちろん、場合によっては少し眠くなりがちなDSD音源などもキレが良く明るめな音調で再生し(理由は後述)、ぱっと音が出てきた瞬間に「お、いい音だ!」と多くの人がうなずくような音質傾向です。
ウォークマンファン・ソニーファンが期待している音質はまさにコレ!という感じで、しかもZX2あたりと比較すると、音場の広がり、定位などの点において着実かつ大きなステップのレベルアップを感じさせます。
反面、情感豊かに聴きたい曲やジャンルなどではちょっとアッサリスッキリしてしまうかな、と感じるような曲も出てくるかもしれません。いうところもあるかと思います。
出てくる音にはかなりの高い満足度が得られるはずですが、使っているうちに、、少し気になる点も出てきました。まずはDSD/PCM音源の再生切替時に本体から「カチカチ」とリレー音がすること。これは内部回路をファイルタイプによってハードウェア的に(!)切り替えているためで、音のためにそこまでやっているのですが、慣れないうちはちょっと驚くかも知れません。(イヤホン・ヘッドホンへの出力音には影響しません)しかし逆に他のプレイヤーで見受けられる、PCM<>DSD音源切替時の再生開始までのタイムラグはほとんどないので、アルバムをまたぐようなシャッフル再生もストレスなく流れます。

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もうひとつ、非常に残念な点であったのが、「バランス接続でないとDSDネイティブ再生ができない」という点です。対応ケーブルが同時発売されているとはいえ、バランス接続に対応可能な環境がないと折角の”ウォークマン史上初の対応となった”DSDネイティブ再生”が味わえない、というのは、出来が良いだけにかなりもったいないところです。
4.4mm5極端子という初登場の規格(しかしJEITA認定規格として正式採用され、海外メーカーでも採用の動きが広まってきています)を採用しているため、ようやく数社から対応ケーブルが出てきた程度でまだケーブルの選択肢も限られており、リケーブル不可タイプのヘッドホン・イヤホンを使う際にはDSDネイティブ再生が味わえません。ここはちょっと頑張ってほしかったなあというのが正直な感想でした。
さらに、これはメーカーさんの色々な大人の事情もあり・・・という事は理解していますが、ここまで従来の殻を破ったモデルであれば、充電およびデータのやり取りの出入り口であるWM-PORTは何とかしてほしかった。特にmicroUSB端子採用の機種は、どこにでも充電器やケーブルがある状態なので、充電やPCと接続して行う色々な事がストレス少なくできるのですが、例えばウォークマンの場合は自宅と会社で使いたい場合には専用ケーブル(サードパーティー品はほぼない!)の買い足しがマストになります。同じソニー系のXperia ZXはUSB-C対応コネクターを採用しましたが、そろそろこの点はソニーさんにも考えて頂きたいところ。せめてプラグアダプターを付属してもらえると、とても助かるのですが・・・

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ただし、よく考えられている機能というのもあります。WM1A/Zはイヤホン端子のゲイン切替をハイ/ロー2段階で変更可能ですが、今回ローゲインで聴いてみた限りではホワイトノイズが気になることは全くありませんでした。これは内部のアンプ回路が優秀で、かなり高いレベルにあることを示します。(ノイズ聴こえるプレーヤー、あるんですよね・・・)
そしてこのゲイン切替。4.4mmバランス接続端子と通常の3.5mmステレオミニヘッドホン出力端子とで独立して指定が可能、という点も見逃せません。特にこのクラスのプレーヤーを使う方はカスタムIEMなどのハイエンドイヤホンの所有率も高いのですが、カスタムIEMの中には本来はステージモニターなどの用途に使うため感度が非常に高く、一般的なイヤホンでの聴取レベルのボリュームで鳴らすと耳に影響が出るような大音量になるほど高感度のモデルが存在する一方、ハイエンドホーム用やスタジオモニターのヘッドホンにはインピーダンスが高くボリュームを上げないとなかなか適正音量の取れないものが存在します。
4.4mmバランス接続はMDR-Z1RやZ7といった大型ヘッドホンで、3.5mmはポータブル用途でカスタムイヤホンで・・・と使い分けされるマニアの方も多いかと思いますが、そんな時でもいちいち設定を変更する手間が省けるあたりは、ハイクラスユーザーの使い型をよく理解した設定がなされています。

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続いて、ソニーのフラッグシップモデル、「30万円のウォークマン」としてニュースにもなった

NW-WM1Z

NW-WM1Z
WM1A・WM1Zを並べてみても、見た目的には色の違いくらいしかありません。が、実際に触れてみると約455gというWM1Zの並々ならぬ”重さ”にまず驚かされます。ライバルと目されるAstell&Kern AK380 Copperの重量が約350gで、これでもポータブルオーディオプレーヤーとしては相当な重さでしたが、「Yシャツの胸ポケットに」というのはちょっと難しそうです。
とはいえ、このクラスのポータブルプレイヤーをお考えの方なら、軽くて持ち運びが・・・などというよりまず、「外でも最高の音質で音楽を聴きたい!」という想いを叶えられるなら、これ位・・・ではないでしょうか。筆者はかつて、カセットウォークマンの最高峰機種であるWM-D6というレジェンドウォークマン(640g)を持ち歩いていましたので、むしろ30年の間に軽くなって音が劇的に進化した?と考えます。ただし、WM-D6はカメラのようなストラップがつけられるようになっており、肩にたすき掛け出来るようになっていたため重さを感じませんでした。WM1シリーズにも、既存ハイレゾプレーヤーの「常識」から離れて、そういったスタイルのキャリングケースが今後出てくると面白いかもしれませんね。
WM1Aで激賞した手になじむデザインは、WM1Zのこの重さになっても変わらない、どころかむしろこの重さだとこのガッシリつかめるデザインじゃないと落としちゃいそうです。

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WM1Aと同じ音源を、WM1Zで聴いてみます。
こちらは一聴して”今までのソニーと違うサウンド”、というとちょっと大げさ?しかしこの音の響きと柔らかな広がり、メリハリよりも全体的な調和とリッチさを重視したかのような鳴らしぶりは、WM1Aのソリッドな「伝統のソニーサウンド」とは別のベクトルと言ってもよいほどで、特にこれまでのウォークマンを聴き込んできた方であればあるほど、「ウォークマンの音」の印象と違うことに驚くのではないでしょうか。もちろん繊細な音までしっかりと描写した上で、さらに奥行きや余韻までも感じさせる、WM1Zの個性。
だからこそ、2つのモデルを同時発売することになった・・・そんな印象を受けます。この数年で様々なメーカーから発売されてきた主に海外製の”高級ハイレゾポータブルプレイヤー”たちに対して、ソニーというメーカーが「ウォークマンの目指すところは、これだ!」と反撃の回答を提示してきた、という感じもします。

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ただし、WM1A同様、元々いろいろ手を加えているような音源や圧縮音源では、DSEE HXを使っても音のアラが強調されたりよく分かってしまう感じで聴こえるようになってしまい、ちょっと暑苦しさや不満を感じさせる点も。この点、ベーシックグレードのNW-Aシリーズなどのほうがそういった音源の処理は上手く聴こえるようになります、WMシリーズはハイレゾの良い音源を入れて聴いて下さいね、ということなのかも?

また、今回両機種の試聴に際してはFitear MH334とWestone ES60のようなカスタムIEMも使ってみました、DAPやアンプのチェックに際してこれらのハイゲインな機種を使うと、機器の残留ノイズのシビアなチェックが出来るためその用途でも使っています。WM1A/Zはイヤホン端子のゲイン切替をハイ/ローの2段階で変更可能ですが、今回ローゲインで聴いてみた限りではホワイトノイズが気になるところはまったくありませんでした。これは素晴らしい!
なお、このゲイン切替は後述の4.4mmバランス接続端子と通常の3.5mm端子とで独立して指定が可能、という点も見逃せません。バランス接続はMDR-Z1RやZ7といった大型ヘッドホンで、3.5mmはイヤホンで、と使い分けがされることも多いかと思いますが、そんな時でもいちいち設定を変更する手間が省けるあたり、しっかりユーザーの使い勝手が考慮されています。

じっくりと試聴してみて、少し気になる点も出てきました。
まずはDSD/PCM音源の再生切替時に本体から「カチカチ」とリレー音がすること。
これはイヤホン・ヘッドホンへの出力音には影響しないのですが、慣れないうちはちょっと驚くかもしれません。しかし逆に他のプレイヤーで見受けられる、音源切替時のタイムラグはほとんどないのでアルバムをまたぐようなシャッフル再生もスムーズに行えます。
もうひとつ、非常に残念なのが「バランス接続でないとDSDネイティブ再生ができない」
という点です。対応ケーブルが同時発売とはいえ、バランス接続に対応可能な環境がないとせっかくの”ウォークマン史上初”DSDネイティブ再生が味わえない…というの、実にもったいないところです。特に4.4mm端子という、これまた製品としては初登場の規格を採用しているわけで、ここはちょっと頑張ってほしかったなあというのが正直な感想。

この2機種、価格面やその仕様の違いからどうしても上位機種・下位機種という感じの位置づけで見てしまいがちですが、そうした見方よりも、別の機種と考えて「音の好み」でじっくりと選んでいただくのが良いと思います。歴史を継承した上でしっかりとブラッシュアップを図り、ウォークマンとしてどう進化できるのかを追及したのがWM1A、その流れにあえて逆らいながら、ソニーのポータブルオーディオプレイヤーとして新しいウォークマンの音を作りあげ抵抗とするWM1Z、そんな感じでしょうか。
えっ2個持ち!?それはショップにとってはありがたいですが、ちょっと大変かも。。。

ということで、10月に開催した秋のヘッドフォン祭2016に両機とも出品して頂き、時間制にもかかわらず多くのお客様にお聴き頂いていた注目機。今回、「ヘッドフォン祭アワード2016秋」のハイクラスDAP部門で数多くの新製品の中からWM1Aが金賞、WM1Zが銀賞と致しました。
WM1Aは1Zの半額以下の価格でこの音、同価格帯では図抜けているということが金賞になった理由で、アワードはコストパフォーマンスなども勘案して決定します。

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恐らく多くのユーザーが、このWM1Zが気になっているはず(両方持ちの方もいそうですが)のAK380系ともちょっと比較してみましょう。対象はある程度使いこんでいるAK380 COPPERです。

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ご覧の通り、出た時にはこんな巨大で重いポータブルプレーヤーってアリ?と思えたAK380 COPPERよりもWM1A/WM1Zのほうが大きいです。幅こそ不当四辺形のAKが広くなりますが、高さ方向は1cm以上違いますね。厚みはデザインから受ける印象で実数値の2mmよりももっと差がある印象です。

AK380(COPPER)寸法: 約79.8× 約112.4 × 約17.9mm
NW-WM1Z寸法:  約65.3 × 約123.4 × 約19.9mm

機能的な面では、どちらもフラッグシップモデルだけに過不足なく装備しています。AK380はソフトウェアアップデートでaptX-HD対応となり、対するソニーはLDACと、Bluetooth伝送系に違いがありますが、これはこの2機種の性能差ではなくコーデック自体の性能差によります。同じヘッドホンで比較試聴できないので正確ではありませんが、対応ヘッドホンで試聴した限りでは伝送ビットレートの高いLDACのほうが音質的には良いと思います。

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物理的な操作ボタン関係については、ご覧の通りかなり差があります、この点では、デザイン面のところで触れた通り人間工学的な配慮が行き届いており使いやすいWM1系の圧勝と言ってよいでしょう。多くのDAPの電源ボタンがスタンバイ時のレジュームボタンも兼ねており、使う頻度が非常に多いので曲コントロールボタンと一緒の面に配置しておいても特に問題はないんですね。
ただし、充電環境についてだけはmicroUSB採用のAKのほうがWM-PORTのソニーより圧倒的に便利。
音質はこれまで触れてきたとおり、ソリッド&シャープで分厚い低音が印象的なAK380系と、どこかぬくもりを感じさせるアナログライクな印象が漂うWM1Zという受け止め方で良いかと思います。AK380はオリジナルのアルミの他にこのCOPPERとSS(ステンレス・スティール)がありますが、材質による音の差はあれど基本的な音質傾向には変わりはありません。対して先述した通りのWM1AとWM1Zの音の差、というのは興味深いですね。WM1Zも銅削り出しの内部シャーシですが。

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ここしばらく明るくないニュースが続き、「あのソニーも、もう・・・」という論調が巷には多かったのですが、特にこの2,3年についてはユーザーや私どものみならず他社の方からも「ソニーは少し前とは変わってきた、何か面白くなってきた」という感想を耳にすることが多くなりました。いわゆる社内ベンチャーのようなオーダーイヤホンメーカー「ジャストイヤー」の立ち上げ然り、「ウォークマン」という栄光のブランドにも、過去に胡坐をかかず「うちが世界一になる!他社には負けないよ!」というような主張が垣間見えるアグレッシブな動きが出てきています。
やはりソニーのオーディオ製品が面白くなれば業界にも活気が出るはず、以前伺った際には今後も色々と製品化へのアイデアはあるというお話でしたので、今後の展開についても大きな期待が持てるようになってきましたね。

NW-WM1Z

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2017年1月2日  by fujiya_contents

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